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ドラッカー名著集 4 非営利組織の経営(P.F.ドラッカー,著)

 

ドラッカー名著集 4 非営利組織の経営

ドラッカー名著集 4 非営利組織の経営

 

大学院の授業で使おうと思って先日再読しました。
初めて読んだのは、記録によると2008年で、そこから何度となく読んできました。日々の事業の中での課題認識の変化からか、今回が一番学びが大きかったです。

株式会社で事業やってるとどうしても頭が財務指標によりがちになるのですが、「非営利組織の経営」のようにミッションや成果そこからのマネジメント手法を大事にしていかなければと改めて思いました。

アメリカの事例・状況が中心 のところもあるので、日本の状況とは違和感があったり、考え方が異なるところもあると思いますが、それでも十分参考になります。

 

いつもの通りですが、さすがのドラッカーということで引用ばかりになります。

企業は財とサービスを供給する。政府はコントロールする。企業は、顧客が買い、払い、顧客のニーズが満たされたとき役割を果たす。政府は、自らの政策が意図した成果をもたらしたとき役割を果たす。非営利組織は、人を変えたとき役割を果たす。非営利組織が生み出すものは、治癒した患者、学ぶ生徒、自立した成人、すなわち変革された人の人生である 

非営利組織の役割について冒頭で明確に述べられています。

特に、「人を変えたときに役割を果たす」というのは痺れます。

今日、非営利組織は、二つの重大な課題に直面している。第一に、寄付者を参画者にすることである。第二に、あらゆる人に絆としてのコミュニティと目的の共有を与えることである。

■ミッションについて

ミッションの価値は文章の美しさにあるのではない。正しい行動をもたらすことにある。リーダーが初めに行うべきは、自らの組織のミッションを考え抜き、定義することである。ミッションは行動本位たるべきものである。さもなければ単なる意図に終わる。

次の仕事はミッション具体化である。目標は具体的でなければいけない。最も犯しやすい過ちが、ミッションによき意図を詰めこみすぎることである。ミッションはシンプルかつ明確にしなければならない。仕事は、一つ追加したならば一つ削除しなければならない。それほど多くのことができるはずがない。

ミッションの三本柱、すなわち第一に、機会すなわちニーズを知らなければならない(機会)。第二に、自らの手にする人的資源、資金、そして何よりも能力に乗って世の中を変え、自らの基準となりうるものは何かを考えなければならない(卓越性)。第三に、何を大事に思うかを考えなければならない(コミットメント)。

イノベーションとリーダーシップ

リーダーにとって最も重要な仕事は、危機の到来を予期することである。回避するためでなく備えるためである。危機がくるまで待つことは責任の放棄である。暴風雨を予期し、先手を打たなければならない。それがイノベーションである。倦むことのない刷新である。

 イノベーションの機会として変化を見つけられるようになっていなければならない。そして、そのような態勢をつくりあげるには、リーダーが先頭に立たなければらない。そのために、まず初めに、機会が見えるようにしなければならない。次に気をつけなければならないことは、保険のかけすぎ、守りすぎ、昨日から離れられないことである。さらに気をつけなければならないことは、新しいものを担当する部署の位置づけである。独立した部門として組織しなければならない。

 ■リーダーを見つける

第一に、その人が何をしてきたか、何がその人の強みかを見る。まず見るべきは強みである。第二に、組織の行うべき重要なことは何かを考える。第三に、真摯さを見る。

非営利組織ではリーダーたる者、並みの仕事ぶりで満足するわけにはいかない。大義にコミットしているのである枯らして並外れて優れた仕事ぶりを要求される。組織の役割について大きなビジョンをもち、自らではなく自らの役割について考えることができなければならない。自らを重視するリーダーは、自らを殺し、自らの組織を殺す。

 ■リーダーの役割

第一に、リーダー自身と適合しなければならない。第二に、なされるべき課題と適合しなければならない。第三に、寄せられる期待と適合しなければならない。

優れたリーダーは「私」とは言わない。いつも「われわれ」と考える。彼らは、自分の仕事がチームを機能させることだということを知っている。責任を引き受け、逃げることをしない。成果は「われわれ」のものとする。

組織にすべてを捧げよというわけではない。ベストを尽くせばよい。人を組織に引きつけるものは高い基準である。高い基準だけが誇りをもたらす。人はもともと貢献することを好む。成果に焦点を合わせることこそリーダーの仕事である。

最後に非営利組織のリーダーがしてはならないことがある。決定する前には人と相談しなければならない。議論したり参画させたりしなければならない。もう一つしてはならないことがある。組織内の個性を恐れることである。そしてしれはならないことの最後は、手柄を一人占めすることであり、部下を悪くいうことである。

■リーダーとしての能力

第一が、人のいうことを聞く意欲、能力、姿勢である。第二が、コミュニケーションの意志、つまり自らの考えを理解してもらう意欲である。第三が、言い訳をしないことである。第四が、仕事の重要性に比べれば、自分などとるに足らないことを認識することである。

リーダーにとって最悪のことは、辞めたあと組織ががたがたになることである。それはリーダーが単に収奪するだけだったことを意味する。何もつくりあげなかったことを意味する。管理人としての仕事はしたかもしれないが、ビジョンは何ももたなかったことを意味する。 

 ■非営利組織にとっての成果

企業には財務上の収支がある。もちろん企業といえども損益だけでは成果を判断できない。しかし損益は具体的である。気に入ろうが気に入るまいが、企業の成果は利益によって測定できる。これに対し非営利組織は、直接成果を考えなければならない。そしてそれを測定する方法を考えなければならない。いずれにせよ、常に考えるべきは成果である。

非営利組織にとって最も難しい問題が、これらあらゆる種類の関係者から、長期の目標について合意を得ることである。長期の目標以外に、すべての関係者の関心を調和させる方法はない。

 

■成果をあげるための意思決定

トップマネジメントが行っている仕事のほとんどは他の者でもできる。だが致命的に重要な意思決定を行うことのできるのは、トップマネジメントだけである。トップマネジメントとしては、成果をあげる意思決定を行うか、その任に耐えずに馬脚を現すかのいずれかしかない。

 最後に帯のこの一言がまさに本書の価値を表している。

非営利組織こそ、ミッション・リーダーシップ・マネジメントの本質がある。

 

 

 

 

 

増補改訂版 V字回復の経営―2年で会社を変えられますか(三枝匡,著)

 

 

サブスクリプション・マーケティング――モノが売れない時代の顧客との関わり方(アン・H・ジャンザー,著)

 

サブスクリプション・マーケティング――モノが売れない時代の顧客との関わり方

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情熱・熱意・執念の経営 すぐやる! 必ずやる! 出来るまでやる! (永守重信,著)

 

情熱・熱意・執念の経営 すぐやる! 必ずやる! 出来るまでやる!

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経営者:日本経済生き残りをかけた闘い(永野健二,著)

 

経営者:日本経済生き残りをかけた闘い

経営者:日本経済生き残りをかけた闘い

 

簡単に言えば、 誰もが知る著名な経営者についての「私の履歴書」を集めたようなものだ。ただし、「私の履歴書」との違いでいうと、これらの経営者について著者自らとの関係や著者の考え方・解釈について、突っ込んだ記述がされていることである。個人的には豊田英二・奥田碩・豊田章雄、出井伸之小倉昌男稲盛和夫あたりが特に面白かった。

 

繰り返し述べられていることではあるが、時代が変化する中でガバナンスの改革ができずに経営の責任と権限が曖昧になり思い切った戦略を選択できずに、多くの企業沈んでいくプロセスが印象的であった。

なお、「渋沢資本主義」については自分なりに理解しているつもりであったが、それが日本にどのような影響を与えたのか、上記のような日本企業の課題があるとしてどのように影響を与えたのかについては、正直よくわからなかった。

<目次>
序 日本を支えた「渋沢資本主義」

第Ⅰ章 戦後日本経済のリーダーたち
1.武藤山治カネボウの「滅びの遺伝子」
2.二度引退した“財界鞍馬天狗”中山素平
3.永野重雄の決断――新日鉄誕生は是か非か
4.トヨタが日本一になった日――豊田英二の時代

第Ⅱ章 高度消費社会の革命児たち
5.中内功――流通革命と『わが安売り哲学』
6.伊藤雅俊鈴木敏文、今生の別れ
7.藤田田、「青の時代」のトリックスター
8.“プラグマティスト”小倉昌男の企業家精神

第Ⅲ章 グローバル時代の変革者たち
9.ジョブズになれなかった男、出井伸之
10.“最後の財界総理”奥田碩の栄光と挫折
11.土光敏夫も変えられなかった「東芝の悲劇」
12.伊夫伎一雄と「溶解する三菱グループ
13.日立の青い鳥、花房正義の物語

第Ⅳ章 新しい時代の挑戦者たち
14.柳井正永久革命
15.豊田章男が背負う「トヨタの未来」
16.孫正義が目指すのは企業かファンドか
17.稲盛和夫が見つけた「資本主義の静脈」