【宮本輝】優駿
- 作者: 宮本輝
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1989/11/28
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私がこれまで読んだ中で、初めて読んでから常に上位3作品にずっと入り続けている作品である。
心にすっと冷たい風が吹いた時に、常に手に取ることが多い。
特に下巻のp.40、p.130あたりは思わず涙が出てしまう。
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「どいつもこいつも夢がねェや。たいそうな夢を持たなくたって、食って行ける。みんな先のことなんて考えねェで、やれ女だ、やれ車だ、やれ外国旅行だって遊び呆けてやがる。でも坊やは一発かましてやるって面してるよ。若い者はそうじゃなくっちゃいけねェや」
「夢なんか持つな。夢を持つから苦しむんだって、何かの映画のセリフにあったわ」
「じゃあ、夢も目標も持ってねェ男と結婚するの? 金だけはあるってェ男と」
「坊や、人間、何か事をやろうって決めたときにゃあ、必ずその行き脚をさえぎるような禍が起こってくるもんだ。俺は学もねェただのつまらねェ博労だが、長生きしてるうちに、それが判ってきた。不思議なことだが、その禍ってのは、自分の一番弱いところをついてくるぜ。それでみんな前へ進めなくなっちまう。ところがこれも不思議なことに、ちくしょう、こんな禍なんかふっとばしてやらあ、俺は行くんだって腹くくったら、禍はいつのまにか消えちまう」